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哲学書簡 - lettres philosophiques sur les Anglais

英国在住の日本人の視点から英国人の考え方などについて徒然と書いていきます

日本語のローマ字表記について

非ラテン語文化圏においては自国語表記のLatin Transliteration(ローマ字化)をするのは当たり前のことで、どこでもやることですが、日本語のtransliterationは実に混沌としていて、この無茶苦茶さは日本人の外国語発音及び外国人の日本語学習に非常に否定的影響を与えているのは明らかです。私も時折友達に「日本語教えてよ」と言われるので簡単に教えるのですが、このローマ字のせいで彼らは色々と混乱していて、いつもまず誤解を解くことから始めなければならないので正直に申し上げるとこの制度には辟易しています。

本来なら音声学者や外国人学習者、帰国子女等の日英バイリンガルらが協議して改革すべきですが、未だに1950年代に確立された古い様式に習っているのは何故でしょうか。まあ、行政府側の怠慢の分析などしても何も生産的なことは出てこないので、ここでは私が考える改善案をいくつか示したいと思います。

 

まず、最も重要なのは「ラ行」です。これは一応「r」で通していますが、特に英語が全くわからない外国人日本語学習者など今時は皆無ですので、基本的にすべての文字は英語と比較されるという前提で考えると、日本語のラ行を「r」のままにしておくのは問題です。というのも、この「r」はヨーロッパで一般的な巻き舌「r」(イタリア語、ロシア語、スウェーデン語など、英仏独語及びイディッシュ語から派生した現代ヘブライ語などの西欧中心部以外では基本的にこの巻き舌「r」が使われます)とも違います。実は日本語のラ行を最も頻繁に使うのはアメリカ人です。アメリカ発音(早口)でwater、better、あるいはtwitterと言う時のtあるいはttの部分は、実は日本語のラ行と音声学的に全く同じです。従って無理に「わーてる」(ちなみにフランス人も本当にこういう風に読みます。e.g. waterlooはフランス語で「ワーテルロー」ですよね。英語では「ウォータールー」(英国音)あるいは「ワラールー」(米国音)です。)のような変な発音にするよりも、「ワラ(藁)」と短めに言えばいいだけなのです。その方が「ウォーター」よりもアメリカ人には絶対通じます。(英国人にはウォーターでいいです)

ということで、私はrとtを混ぜたような記号、例えばrに横棒を一本入れたものなどを新たに作った方が、双方の誤解が解けるのではないかと考えています。(ちなみにこういうことはロシア語やポーランド語、アラビア語あるいはペルシャ語などをラテン化するときにも行われていますので、何らおかしなことではありません。ラテン語にない音を表すには新たな記号をつくっても良いのです)

次に重要なのは「ふ」の表記です。ハ行では「は」「ひ」「へ」「ほ」までは「h」で全く問題ありません。しかし、日本語で「f」音を表そうとする時、我々は「ふ」を常に使いますよね。「ファイト」、「フィールズ賞」、「フーリガン」、「フェンシング」、「フォント」など。この内紛らわしいのは「フー」の場合です。日本人も時折この音を完全に混同している場合があります。「ファイト」とはしっかり「f」音で言えるのに、「フード」がfoodなのかhoodなのかを区別できない。従って日本人が誤って「フーリッシュ」という時ほど滑稽なものはないという大問題が発生してしまいます。これを解消する為には、「ふ」を特殊記号化するか、あるいはもうひとつ別の記号をつくるかしなければなりません。つまり平仮名/片仮名に新たにひとつ「ファ行」を加えるのです。そうすれば、とりあえずこの無駄な混乱は防げます。また同様に、これによってbとvの区別も容易になります。今はv音のところはヴァンパイアなど「ウ」に濁点をつけるという実にad hocで意味不明なことをしていますが、「fa行」を創設すればこれに濁点を加えることで「va行」をつくることができ、実にすっきりした体系にできます。

後は、「タ行」と「サ行」ですね。まず、「ch」をどう使うかですが、これはフランス語話者にとって実に紛らわしいです。実際にフランスでは福島第一(Fukushima Daiichi)をそのままフランス語読みして、「ふ(f音)くしまだいーし」と読んでいます。これではまるでDaeshみたいに聞こえて縁起が悪いことこの上ないです。またドイツ語でもchは本来ならxで表現されるべき音を表すことになっているので、例えばChinisisch(中国人)は「ヒニーズィッシュ」という感じに聞こえます。(本来は清帝国あるいは秦帝国のshinがchiniとペルシャ語で読まれていたのをフランス語風にラテン化したところからきています。ちなみに「チェス」もペルシャ語由来ですが、ペルシャ語で「check」は「shah」のような音です。ロシア語ではこれに忠実に従い今でもチェスのことをшахматы (shah'matyi)と言います。ここからも、ペルシャ語の"sh"音がフランス語経由で"ch"と表記され、これが各国のch音に合わせて歪めらていったという経緯がはっきりします。ということで、chは紛らわしいのです。chを「チェ」と読むのは主に英語ですが、ラテン系の言語ではch音は「チェ」とは読みませんし、ゲルマン系の言語ではそもそも「チェ」という音が原則ありませんので必要ないか、Tschなどの形で適当につくられています(ドイツ語のTschüssなど)。加えて「ch」自体は「k」音として処理される場合が多いです。(例えば英語圏のドイツ語学習者は「ch」を「k」化する人が多いです)というわけで、私のお勧めはチェコ語に習ってCzで表記することです。これが最もシンプルで誤解が少ないと思います。

つまり、「ta」「czi」「 czu」「 te」「 to」にするということです。これなら、濁点の場合はtあるいはcをすべてdに変えればそのまま使えます。つまり「da」「 dzi」「 dzu」「 de」「 do」です。

サ行は一見ヘボン式のまま「sa」「shi」「su」「se」「so」で良いように思われますが、こうしてしまうと「ザ行」にs以外を使わねばならなくなります。で、zを使うとこれも紛らわしい。ドイツ語ではzはts音だからです。かといってjやgでも紛らわしい。ひとつの解決案は「サ行」をssで表記することです。「ssa」「 sshi」「 ssu」「 sse」「 sso」にする。で、ザ行はドイツ語風に 「sa」「 si」「 su」「 se」 「so」 で統一する。しかしこれだと煩雑なので、個人的にはサ行はそのままにしてザ行の方をs+zで統一して「sza」「szi」「szu」「sze」「szo」とした方がシンプルで一貫性がある(タ行との関連性が見やすい)かなと思います。

 

他にも直すべき点があるかもしれませんが、今パッと思い浮かぶのはこんなところです。皆さんはどう思われるでしょうか。