哲学書簡 - lettres philosophiques sur les Anglais

英国在住の日本人の視点から英国人の考え方などについて徒然と書いていきます

自己紹介&本ブログの趣旨、及び英国留学のもうひとつの方法について

初めまして。神谷と申します。

 

2016年10月から2017年1月終わり頃まで「アゴラ 言論プラットフォーム」に正式メンバーの一員として寄稿させて頂いておりましたが、「歴史修正主義」に関する見解の相違をきっかけに池田信夫氏から叱責を受け、現在アカウント凍結状態になっております。(この件に関しては私の知らぬ間に「まとめ」て下さった方がおられましたので、その詳細については以下でご確認頂ければと思います。)そこでどうしたものかと考えていたところ、「イスラーム国の衝撃」という名著あるいは「中東風姿花伝」というブログで知られる東京大学助教授の池内恵先生から直々に、あくまで勉強に支障が出ない範囲で個人ブログにて「時事問題の背後にある哲学問題について、100人ぐらいに向けて独り言」(この部分は直接引用です。これ以上良い言い方が見つからないのでそのまま使わせて頂きました。)を発信していけばどうかとのアドバイスを頂きましたので、ここに改めてブログを開設したいと考えるに至った次第であります。

とはいえ、「アゴラ」では全く自己紹介のようなことはしなかったので、拙稿を読まれた方々の中には「神谷匠蔵って誰」という疑問を持たれた方々も多くいらっしゃることでしょう。

そこで今回は少しだけ自己紹介のような部分を含めようかと思ったのですが、大した人間でもない私の個人情報を知っても読者様の側に得られるものはさほどないだろうと思い直し、私が英国留学に至った経緯のみを「あまり知られていないもうひとつの留学方法」の紹介という形で簡単に紹介するに留めたいと思います。

さて、私は現在英国のダラム大学(Durham University)というところで哲学を専攻している大学二年生です。(英国の大学学部過程は三年制なので、来年卒業ということになります。)大学院じゃないのかよ、という話ですが、学士号をとっていないので大学院には入れませんでした。

通常日本人が高校卒業後に英国の大学に入る場合、普通は入れてもらえません。時々灘や開成の卒業生がさも「現役」で「オックスフォード」やら「ケンブリッジ」に合格しているかのような印象を与えるニュースが飛んできますが、灘や開成だけ特別扱いされているのでもない限り、通常は日本の高校を卒業してもオックスブリッジはおろか英国の大学の受験資格は一切ありません。

そこで、多くの日本人学生は「Foundation Course」という「基礎固めコース」とでも言うべき準備過程にまず入学し、一年かけてこれを卒業、その際に十分な成績を収めれば正式に学部過程に入学できる、という経路を辿ります。従って日本で高校を卒業した人(インターナショナルスクール出身者や学校がA levelsコースを提供している場合を除く)の場合、英国の大学に入学するには19歳、誕生日が10月以前の場合は20歳が最年少です。

とはいえ、「Foundation」をやるだけでは「オックスブリッジ」の受験資格はもらえません。というのも、Foundation Courseは多くの場合各大学が独自に設置しており、その大学への入学資格を与えるものに過ぎない一方で、オックスブリッジ自身はオックスブリッジ専用のFoundation Courseを設けていないからです。ということで、日本の高校を卒業した人がオックスブリッジに学部から入りたい場合はまず他の英国人の学生のように「A-levels」試験を受ける必要があります。(詳細は以下参照)つまり、「高校レベル」からやり直すわけです。従って速習の場合でも大体2年程度かかるようです。しかも成績が悪い場合はオックスブリッジの場合は足切りされてしまうので、高額の授業料を払ってA levelsからやり直し、2年間も勉強した上でさらにオックスブリッジに三年間「international student」としてやはり高額の授業料を払い続ける、というのはよほど時間的、金銭的及び精神的余裕がなければやれないことでしょう。

また最近は中国において国内でA-levels試験を受けれる学校も出てきており、激増する中国富裕層の間では英国留学を視野に入れている人々も少なくないので、「東アジア人枠」は経済的に安定している中国富裕層や、香港やシンガポールなどの「英語圏」化したアジア諸国出身者で埋まりやすく、また同じ日本人でもインター出身の完全バイリンガルが当然名門大学を狙ってくるので、「帰国子女」でもない「純ジャパ」の日本人にとっては非常に厳しい競争を強いられる可能性もあるかもしれません。

とはいえ、私自身はそういった高額かつ困難な道を辿ったわけではないので、オックスブリッジは最初から選択肢に入っていませんでした。というのも、私はほとんど「転学」に近い形をとったからです。どういうことかと言いますと、私は日本の大学の一年時修了の「学歴」で以って「Foundation」に代わるものとして大学側に認めてもらったのです。留学したいなと考えはじめた時にComplete University Guideの「Philosophy」の欄で上から順に英国の大学にコンタクトをとってみたところ、この形での入学も考慮する場合があるとしている大学もいくつかあり、その中でも最も積極的に受け入れの姿勢を示してくれたのがダラム大学なのですが、ダラム大学は「哲学/philosophy」ではオックスブリッジに次ぐ第三番手の入試難易度(entry standards)の大学であるとのことだったのでこれは願ってもないチャンスだと思い、そのまま入学手続きに進むことにしたわけです。その際に必要だったのはこれまでの日本の大学在学時の「成績」(最高成績Aの比率が75%以上)と、IELTSで総合6.5以上(各項目6.0以上)という英語資格でした。

こんな例外的な方法で入学する例は極めて珍しいと思いますのであまり参考にならないかもしれませんが、英国に来て FoundationやA levelsをやるよりは一般の日本人にとってはむしろ現実的かつ経済的な方法とも考えられなくはないので、具体的に私が何をしたのかを簡単に説明します。

まずは、大学一年時はなるべく良い成績をとること。私が在学していたのは慶應義塾大学法学部法律学科ですが、慶應の法学部にも単位さえとれれば良いということで「楽単」を選ぼうとする学生は少なくとも一定数います。逆にそういう人たちを怪訝な顔で見ている真面目な学生も少なからずいます。この「楽単主義」は大学自身が世間に対して学問の価値を強く主張できなくなってきた中で成立した現行の日本的教育制度の中では確かに賢い選択ですが、D(不可)を絶対につけないがA(最優)も出さないような「楽単」は果たして楽単と言えるのか、留学志望者なら考えた方が良いでしょう。

そもそも理想としては単位を取るのが楽かどうかという基準で科目を選ぶのは学生としてのモラルハザードと言うより他なく、むしろ密度の濃い「エグ単」を取ることに意味があるのですが、そうすることに純粋に知性が磨かれるという以上の外面的メリットが全くなく、日本で就職や進学する際には別個に「入社試験」なり「入学試験」があるので大学時代の成績はさほど重視されず、また海外留学の際にも問題になるのはどの先生のどの科目をとったかではなく、「総合成績」という表面的な部分しか評価されないのが現実なので、実際にはAをとれる科目から優先していくのも自分の身を守る為の一つの有効な手段であることは認めざるを得ません。

私自身は一年生の時は「楽単」は一切取らず、純粋に知的好奇心に基づき、あるいは制度上取らなければいけない科目を難易度を度外視して取りましたが、このやり方が効率的であるとは全く思えませんでした。結果的に難易度の高い科目でもそれなりに勉強すればAはとれましたが、しかし1日の時間は限られているので、全科目を「エグ単」で埋めてしまうと時間が足りなくなる危険があります。それが本来のあるべき学生の姿なのかもしれませんが、周りの学生が楽々と良い成績をとりつつプライベートも楽しんでいる中で自律的にカントのような禁欲生活を送るのは決して簡単なことではありません。

ということで、理想的には難易度に関わらず良質な授業をとってAを揃えることですが、実践的にはAをとれそうな科目をしたたかにかつ確実にとっていくのが現実的戦略となるでしょう。とはいえ、実際のところ往々にして重要なのは自分が興味を持っているかどうかであって一般的難易度そのものではないので、特に東大のように自由度のある制度の中では興味のある科目からとっていけば結果として成績も付いてくるとは思います。言うまでもなくある程度以上の大学ではAを連発する先生というのはほとんどいないと思うので、まずは興味のある科目をしっかり勉強することが一番の近道です。

次に、何でも良いので何らかの学問に関わる「賞」を貰うことです。私の場合選択科目としてとっていた英語上級クラスで書いた小論文は、是非学内コンテストにも出すようにと先生から言われていたので、これはチャンスだと思ってかなり時間をかけてコンテストに提出したところ、最高賞を頂きました。佳作程度ならもしかしたら貰えるかなというくらいの気持ちで提出したのですが、予想以上の高評価を受け吃驚しました。とはいえそれなりに努力はしたので達成感はありましたし、何よりこれは少なくとも人並み以上の学習意欲を示す論拠にはなりますし、また英語圏に留学する場合には欠かせない「推薦状」を書いてもらう際のしっかりとした理由になる点も案外重要です。学問分野での受賞経験は直接推薦状を書いてもらう際の確固とした理由に繋がるので、正規留学のみならず交換留学の場合でも、受賞経験は手続きを円滑に進める上で大いに役立ちます。

あとは、これは今更言うまでもないことのようで案外忘れがちなことなので一応言いますが、語学力の証明書類を揃えることですね。実は私の場合IELTSもTOEFLも一度も受けたことがなかった上に留学を決めたのがあまりに遅かったせいで、留学を決めた時点で予めIELTSの受験申し込みをしていたにも関わらず、受験結果の提出期限までに提出できる結果が存在しないという危機的状況で、大学側に事情を説明し少しだけ期限を延長してもらうという土壇場具合でした。というわけで失敗の許されない中でのIELTS初受験でしたが、思っていたよりも難しくあまり捗々しくなかったものの、とりあえず基準点はクリアしていたので何とかなりました。とはいえ、これに関しては私は完全に準備不足だったなと今更後悔している部分もあるので、最初から定期的にIELTSなりTOEFLを受けておくに越したことはないと念押ししておこうと思います。やはりその方が無駄なプレッシャーを感じることもないし、ベストな成績を提出できるのは明らかです。

概ね以上の三点さえクリアすれば、一年日本の大学を試した後に2年次の途中から英国の大学に入り直す(卒業は半年遅れるだけです)ということは一応可能だと思われます。

実際私はそんな感じで本当に英国にやって来たわけですので、日本人にもA levelsやIBを介さず、その意味では若干格安で英国の大学(オックスブリッジを除く)に入れる可能性はあるということです。勿論オックスブリッジでないなら東大の方が上だからわざわざ留学しないという考えも一応有りですので、そういう方には是非A levelsなり東大受験なりを頑張っていただければと思いますが、特にオックスブリッジにこだわっているわけでもなく、とにかく英国に正規留学したいのだけれど、「Foundationからやるのもなぁ」という風に考えて日本の大学に入ってしまった方には、私のとった選択肢は参考になるかもしれません。

さて、そんな私ですが、このブログでは主に英国における動向や「日本」について今私が考えていることなどについて少しずつ書いていきたいと思っています。「アゴラ」では読者傾向に合わせて比較的右寄りの話題を中心に扱ってきましたが、個人ブログなのでもっと自由に、つまりもっとバランスのとれた、専門性が高く読者を選ぶような内容を扱っていきたいと思います。それでは、長くなりましたがどうぞよろしくお願いいたします。