哲学書簡 - lettres philosophiques sur les Anglais (par un Spinoziste Japonais)

英国在住の日本人の視点から英国人の考え方などについて徒然と書いていきます

真の親日国はフランスである(という統計があります、という話)

このBBC World Service Poll(2017年度版)によると、日本って結構肯定的に評価されているみたいですね。この結果はWikipediaのAnti-Japanese sentimentのページに見やすいグラフにまとめられています。中国を除けば全ての調査対象国で日本に対する肯定評価が否定評価を上回っているというのが実に興味深い。逆に中国が日本を嫌っているのは予想できることですが、2013年の90%という数字はさすがに異常な気がします。これが2017年には「改善」して75%ですが、それでも十分嫌われていますね。次点で「反日」的なのはスペインですが、理由がよくわからないなと思ってスペインの他のアジア諸国に対する態度を念の為確認してみると、スペインの韓国や中国に対しての評価は否定評価が肯定評価を上回っており、全体として単純にアジア系国家(あるいは有色人種)に対して否定的というだけのことのようです。この背景にはスペインの高い失業率(及びそれに伴う「移民」に仕事を取られているという感覚)があるのは容易に推察できますが、むしろそうした人種差別的感情が根強く残る(あるいは経済状況の悪化で強化されている)スペインにおいて、辛うじてではあれ否定評価を上回る肯定評価を獲得している日本は驚異的と言えるかもしれません。

 

それにしても、日本の国際的影響(Global Influence)がカナダ、ドイツに次いで肯定的に評価されている国であるというのはちょっと驚きです。カナダとドイツはともに「多文化主義」や「移民・難民の積極的受け入れ」を提唱するなどして、世界に自国の「寛容さ」をアピールしてきた実績のある国であり、つまり国際社会に肯定的に評価される為の努力がかなり(場合によっては過度に)行われている国ですが、日本というのはそもそも近隣諸国に酷評され続けている安倍首相率いる自民党政権が2013年以来ずっと政権を維持しているわけで、また別に難民を大規模に受け入れたわけでも、あるいは国内の文化政策を急激に変えたわけでもなく(とはいえ、LGBTに関する法やヘイト・スピーチに関する法なのが相次いで制定されたのは大きいかもしれません)、こういった点において英米仏の先を行っているわけでは決してないからです。

 

逆に言えば、こうした高い評価の裏返しが日本の(カナダやドイツと比較した際の)「遅れ」への批判として表出してくるのかもしれませんね。つまり、世界は自民党一強状態であるという点を問題視するよりも、むしろこの状態でも既に「トランプのアメリカ」や「Brexitのイギリス」よりも「日本」の方が「マシ」である、というように日本に対して英米仏以上の期待を持って見ているのであって、つまり我々が比べられている対象というのは英米仏ですらなく「カナダ」や「ドイツ」だということです。私もさすがにそこまでとは思っていませんでしたが、やはり国際社会の日本に対する期待と肯定評価は恐らく日本人が考えているよりずっと大きいものだという私の仮説はやはりそんなに間違っていないのかもしれません。

 

中国や韓国に否定的に評価されるのはもはや仕方のないことで、頑張っても90%レベルのマイナス評価が60%くらいにまで下がるかどうかという程度の話なので、もはやここに焦点を絞っても仕方がないということがこうして数値化して見るとよくわかります。そんなことに気を使うよりも、我々がもっと気を配るべきなのは全体としての国際社会の評価であり、特に日本を最も高く評価しているオーストラリア、フランス、英国、カナダや米国を含む南北米諸国、及びインド以西のアジア・アフリカ諸国に対してもっと積極的に交流していく方が得策ではないかという風に思えます。

 

中でもカナダは中華系人口も多いにも関わらず(否むしろそれ故にでしょうか?)日本に対する肯定評価が高く、かつそれが単なる東アジア全体に対する評価ではなく日本という国そのものに対する評価であることは、カナダの韓国への評価の相対的低さから推せられます。逆にオーストラリアの場合は単純に「中国」という共通の仮想敵に対抗する同盟国としての東アジア諸国全体に肯定的感情を持っているという傾向が見受けられ、カナダほど日韓の間で評価に差がありません。同様に英国や米国に関しても、日本の方が常に若干優勢とはいえ、韓国と日本の評価にはさほど差がないので、これらの英語圏諸国にはそれほど際立って高く評価されているというわけでもないということがわかります。従って英米やドイツなどのゲルマン諸国などと友好関係にあってもあまりメリットはありません。

 

むしろ、最重要視すべきはフランスです。というのもフランスの韓国に対する評価は著しく低く、肯定45%に対し反感44%と拮抗しています。(当然ながら中国への評価はもっと厳しいです。)これに対して日本へは肯定が74%、反感が21%と欧州の中では群を抜いており、かつ中国や韓国に対してのフランス人の評価は決して高くないことから、彼らは本当に「日本」が好きなのであって、決して「東アジア」全体に漠然と好感を持っているわけではないということがわかります。私は以前から日本人はもっと親仏的であるべきだと思っていましたし随所で示唆してきましたが、このように数値化すれば一目瞭然であって、フランスこそ日本が文化政策面で最大の同盟国とすべき盟友なのです。更に言えば、英語圏出身者やスカンディナヴィアの「ブロンド」人種だけを見て「白人は日本人を馬鹿にしている」という偏見を持つのは間違っており、フランスが如何に破格の親日感情を持っているかということを我々はもっとはっきり認識すべきですし、何より「白人」というカテゴリの中の多様性を無視して英米人などのゲルマン族とフランス人を同列扱いするのはフランス人に対して「失礼」でしょう。なのでこれからは日本で白人を見かけたら「あなたはアメリカ人ですか?」と聞くのではなく、「あなたはフランス人ですか?」あるいは「カナダ人ですか?」と聞くようにすることを推奨します。笑

(実際フランス人(またはカナダ人)と間違われて気分を害する英米人はいませんが、フランス人やカナダ人は英米人と思われることを割と真剣に不快に感じるので、そうすることにはメリットしかないはずです。)

 

ということで、我々はもっとフランス(とカナダを含むフランス語圏)との友好を大事にすべきではないかということを今一度強調しておきたいと思います。英米に媚を売っても何も出てきませんが、フランスを贔屓にすることにはそれなりの見返りがあるはずです。そして我々は世界に嫌われているどころか大きな期待の眼で注目されているかもしれないということを前提に文化政策を立てていくべきだと私は思います。

 

また、主要国以外にもインド以西のアジア諸国や東南アジア、イスラーム圏および南米といった、要するに中国・韓国・北朝鮮の三国を除いた全地域で日本は比較的高い評価を得ていることにも着眼すべきです。我々はともするとこうした非先進国出身者に対しての敬意や注目を欠きがちですが、彼らとの関係構築に際して我々が決して英米や中国・韓国といった他のライバル国より不当に不利な立ち位置に置かれているわけではないのですから、ここは努力のしがいがあるのではないでしょうか。だとすれば、少なくともこれらのマイナー諸国の地域研究をされている先生方からもっと学ぶべきことがあるはずです。

 

いずれにせよ、日本はそろそろ「英米」との絶対的協調をまるで脅迫されているかのように優先する「戦後レジーム」から脱却すべきではないでしょうか。別に英米を無視しろとか、明確な反英米路線を打ち出せというのではなく、単に英米が決して日本を東アジアの中で特別視しておらず、韓国とほぼ同列扱いしかしていないという現実を直視し、これに対して圧倒的に日本支持へ傾いているフランスにこちらもより傾斜をかけていくという戦略的転換をすべきではないかというだけのことです。

 

ここではあまり触れませんでしたが、ロシアとの関係も我々が「戦後レジーム」から脱却さえすればもう少し改善の余地があるはずです。少なくとも統計を見る限りではロシア人の対日感情はインドやドイツと同程度のものであり、決して悪いものではありません。逆によく「親日国」と紹介される「トルコ」は実は全然そんなことはなく、むしろ日本に対する否定評価がスペインに次いで高いという「反日」ワースト3に入っています。(そして、その次は英国です。)それならいっそ親仏・親露路線というのも全然ありなのではないでしょうか。その上で我々が独自に発展途上国への支援的姿勢をはっきりと打ち出して、PKOなどにも積極的に主導する形で参加していけば日本の立ち位置は大きく変わり得ます。それでも対米従属を続けていくべきなのでしょうか?

 

私の狭い見識から見れば、英米に隷属していても何のいいこともないと思います。イギリスは知的には誠実なので無視はできませんが、それ故に優先すべき友好国にはなり得ませんし、アメリカはどこまでも自国優先であって、かつアメリカにとっての利益を最大化する戦略は決して日本を韓国以上に優先するような政策は含まれません。むしろ日韓の対立を煽る方が有益くらいに思っている可能性さえあります。日本を露骨に高評価しているのはフランスとカナダだけで、特にフランスにおける親日文化の伝統は長く、かつ深く浸透しています。極端にいえば、日本独自の文化を維持することに単なる多文化主義的「寛容」以上の肯定的価値を認めているのは先進国の中ではフランス人だけです。勿論、フランス人が日本を全面的に好きなわけでもないし、彼らは元来批判精神旺盛で多少なりとも意地悪なところのある人たちです。ヨーロッパの中でも「フランス人」というのはなにかと馬鹿にされたり変わり者扱いされます。それでも、全体として理性に最も忠実なのはやはりフランスですし、我々の行いに対して欧州人の中で最も公平な判断をしてくれるのもフランス人です。それは第二次世界大戦の頃もそうでしたし、東京裁判でもフランス代表のアンリ・ベルナールは独自の見解を提出しており、それは決して過度に懲罰的でも感情的でもなく、あるいは「列強支配の被害者」として日本を甘やかすのでもなく、見方によっては実に理路整然とした「公平」なものだと理解し得るものです。

 

むしろ、こうした歴史的経緯がありながら、日本がフランスに対して他の西欧諸国以上の特別な肯定的感情を持ってこなかったことの方が私には不思議に思えます。もしかすると日本人は本質的にフランス的な理性の文化が気に入らず、どちらかというとイギリスの紳士の文化の方が好きだという単純な好みの問題なのかもしれませんが、紳士の方が知的な革命家よりも日本に対して「公平」であり得るわけがないとは思いませんか?

 

それは、フランス人の中には天皇制を大いに批判する人もいるでしょう。イギリス人の方がその点に関しては理解があるかもしれません。しかし、それはフランス人が天皇制以外の様々な日本文化の側面を高く評価し、天皇制などなくても日本は十分に素晴らしい国だと思っているからこその「批判」です。つまりフランス人にとっての「批判」とは英米人や日本人のような単なる侮蔑や嘲笑の表現ではなくて、単に理性に反するあらゆるものへの宣戦布告に過ぎません。要するにそこに合理的必然性があることさえ示せばそれで良いのです。そういう人たちの方が私は付き合いやすいと思うのですが、どうでしょうか?

 

まあ、確かに個人のレベルではイギリス人の行儀の良さを好む気持ちもわからなくはないですが、とにもかくにも我々に対して最も肯定的でかつ最も公平であり得るのはフランス人であり、またカナダ人であるということ、そしてオーストラリアやロシアなど、これまでの偏見ではなんとなく「反日」的とされてきた国が実は全然そんなことはなく、むしろ東アジア全体に肯定感情を持っていること、そして逆に「親日」とされてきた「トルコ」や「インド」などは実はそれほど「親日的」でもないことなどがBBCの統計からは見えてきますよ、ということです。ということで、今後は既存の枠組みに囚われることなく、「日仏露加」を中心に大陸横断同盟を形成する方針が日本にとって最良ではないかと夢想的な提案をして擱筆したいと思います。